「あ,君子か.おはよ」 まさとはかばんを持って,制服をごそごそさせながら言った.
「起きてる…….お兄ちゃんが.制服着て.この時間に」 「うるさいな,俺だって早起きするときがあるんだよ」 早起きの理由は 1 つだった.かすみに会うこと,それだけだ.かすみは,いつも階段を下りた入り口のところで待っているはずだ.会って話をしなければ. ……でも,かすみと何の話をしたいんだろう. ……っていうか,何でこんなに焦ってるんだろ,俺.
「行ってきます」
まだ歯を磨きながら,君子はぼーっと玄関の方を見ていた. |