「あ,君子か.おはよ」

まさとはかばんを持って,制服をごそごそさせながら言った.

「起きてる…….お兄ちゃんが.制服着て.この時間に」
君子はしみじみと自分の兄を見た.まだ信じられないようである.

「うるさいな,俺だって早起きするときがあるんだよ」

早起きの理由は 1 つだった.かすみに会うこと,それだけだ.かすみは,いつも階段を下りた入り口のところで待っているはずだ.会って話をしなければ. 

……でも,かすみと何の話をしたいんだろう.

……っていうか,何でこんなに焦ってるんだろ,俺.

「行ってきます」
あっというまにドアが開き,そして,閉じた.

まだ歯を磨きながら,君子はぼーっと玄関の方を見ていた.
そして,ぽつりとつぶやいた.
「雪でも降るんじゃないかな」




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